おみやげ屋さんのちょうど裏辺りに本社の正面玄関がある。つまり、私とシルビアさんは別の入り口から本社に入り裏から正面玄関に入ったことになる。そこでまず目に飛び込んできたのが、「510」という数字の巨大な看板だった。脇に「ALI DAY」と書かれている。アリババ創業者のジャック・マー氏が2005年に5月10日をアリババの日、つまりアリ・デーを命名したことが由来だ。
日本では11月11日のいわゆる「独身の日」が毎年メディアを騒がせている。去年の2019年でもアリババが管轄するEコマース (電子商取引) だけで4兆円を超えたことが大きな話題になった。しかし、この5月10日のアリ・デーについてはほとんど知られていない。
それもそのはず、これは社員向けの感謝祭でもあるのだ。どういうことかというと、淘宝網(タオバオ)がローンチしたのが2003年の5月10日。このとき中国ではSARS(重症急性呼吸器症候群)問題が巻き起こり、アリババの従業員の一人に感染の疑いが出た。そこで当時およそ400人いた社員全員が自宅待機を命じられたのだ。しかし、タオバオのローンチが迫っていたため、社員は自宅で仕事を続行した。それは8日間に及んだという。
無事に予定通りタオバオをスタートできたことにジャック・マーは感激。2005年5月10日に最初のアリ・デーを催した。この日は毎年、従業員やその家族、友人までも本社に招待され、さながら大学の学園祭のようなお祭りを楽しむのだという。

現在、中国では新型のウイルス肺炎が問題になっている。現在10万人を超えた社員が自宅待機を命じられ仕事ができなくなったら大変なことになる。このアリ・デーのエピソードにアリババの社員はいま改めて身が引き締まる思いをしているだろう。